2010年度版、アップしました。(2011年1月15日)


by lunaluni

こま・選 2008年度

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」原卓也・訳

「今年の一推本」が「カラマーゾフの兄弟」といって、今年総計百万部の亀山郁夫・訳の光文社文庫ではない。原卓也訳の「新潮世界文学」で1971年に出版された訳本である。「カラマーゾフの兄弟」を、この原卓也・訳で四半世紀ぶりに再読して、じつにスリリングな知的興奮を体験した。こういう体験は、翻ってみるに、日本の小説では埴谷雄高「死霊」くらいじゃなかろうか。それはさておき、なぜ亀山郁夫の新訳ではなく、原卓也の旧訳を推すのか。そりゃ簡単、訳文が違うから。ゾシマ長老の語りを較べて、亀山郁夫の訳はイケマセンとあいなった。新訳だからいいってわけではないことはよくある。同じ光文社文庫のシュペルヴィエル「海の少女」(という訳題だったかな?)を本屋で試し読みして投げ出した。文章があまりに子どもじみている。別の小説かと思ったくらい。
 翻訳については斎藤美奈子「誤読日記」朝日新聞社2005年でサリンジャー「キャッチャー・イン・ザ・ライ」村上春樹・訳と旧訳の「ライ麦でつかまえて」野崎孝・訳を較べている。キャッチコピーがいい。
「築40年の物件を新装開店させるべく、リフォームの匠が立ち上がった」
 彼女曰く。
「本の新訳っていうのも、一種のリフォームなのではないか。」
「野崎孝訳は装飾過剰だとここでは書いたが、逆にいうと村上春樹訳は平板なのだ。リフォームとはなべてそんなものである。」

 そう、亀山郁夫・リフォーム訳は平板なの。それにしても、今年新刊で買っている本が創元推理文庫の高城高くらいとは。考えを変える? いや、変えません。
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by lunaluni | 2009-01-02 22:02