2010年度版、アップしました。(2011年1月15日)


by lunaluni

マツモト・選 2007年度

◇『イトウの恋』 中島京子

2007年、イチバンたくさん読んだのが中島京子さんの小説だと思います。中ではこれがピカイチ。『村田エフェンディ滞土録』をちょっと彷彿させられました。
こういう、ちょっと凝ったつくりの小説って好きなんですよ。
この場合、「ちょっと」がポイントですね。あまり凝り過ぎなのはダメ。頭、悪いんで。
バリバリの恋愛小説です。実在の女性旅行家イザベラ・バードに恋焦がれ続ける年下通訳の伊藤亀吉という設定が絶妙です。
亀吉の心理、特に嫉妬関係が特に読ませます。
同時進行で描かれる現代もなかなかおもしろかったです。

◇『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ

これに関しては、自分のブログで読了直後に書いた感想文の一部を転載させてください。

読んでいる最中‥特に中盤までは何度も「もったいぶってんなー」「時系列が交錯し過ぎ」と思った語り口にも終盤はもしかしたら作者の意図以上の意味を感じ、清廉さと不気味さ、絶望と希望、共感と嫌悪、という相対する感慨で本を閉じました。
この読後感は、村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』にちょっと似ているかもしれません。まさに「The end of the world」。

衝撃的な設定の小説ではありますが、基本は心の機微を丹念に縫い上げていく、ような文章の羅列です。
人の気持ちが、ほんのちょっとしたきっかけで一瞬のうちに真逆に変わってしまうさまや、何か驚くべき不本意な事態に陥ったとき、人は往々にして、なすすべもないどころかむしろ積極的に諦めていく‥そのあたりの描写がものすごく巧いです。

読み終わって、しばし、ぼおっとしてしまいました。
じわじわと打ちのめされるような小説でした。

◇『憲法九条を世界遺産に』 太田光・中沢新一

諸手をあげて「よかった!」と思ったわけでもないのです。賛同しかねる箇所もけっこうあるし、特に中沢新一という人の見解というかポジションには首をかしげる部分が多いです。でも、それを補って余りある、タイトルの秀逸さ、そして太田光の度を超した真剣さ。
なんだかんだ言っても、私は太田君(←デビューから見てるもんでい、つい)はかっこいいと思うんだよなあ。
なにより信用できるのが、ちゃんと漫才をやってるところ。それはまた別の話、と言われそうですけど。

◇『武士道シックスティーン』 誉田哲也

この小説のためだけにでも剣道をやっとけばよかった、と思いました。
武蔵オタクの香織、日舞育ち(?)の早苗、というヒロイン二人の人物設定がすごくいいのが勝因。
特に早苗は、一歩間違えると凡庸になりそうなキャラなのに、すごく魅力的に描かれていて好感を持ちました。
栞の紅白のヒモがキュートです。
心がすさんだら、また読みたくなるかも。
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by lunaluni | 2008-01-09 02:30