2010年度版、アップしました。(2011年1月15日)


by lunaluni

マリーナ号・選 2007年度

 「旅芸人のいた風景」沖浦和光・著(文春新書)

 乞胸、願人坊主、香具師、法界屋、演歌師、猿廻し、渡り職人、行商人・・・現代人と上古の日本人の心とを繋ぐ、今にも絶えそうな細い魂の血脈。あたかもそれを伝って今日にタイムスリップして来ていたかのような、街角の遊芸人たちだった。
 彼らはどこから来てどこへ去っていったのか。彼らは何者だったのか。中世から続く遊芸の民たちの生きた痕跡を追った、著者ならではの日本裏面史。
 まさに歴史の闇に消え去らんとする街角の遊芸人たちの姿を目撃した世代である著者の筆致は、生々しく彼らの存在の感触を伝える。
 ページの隅々にまで細かい雨の降っているような愛惜の念が溢れて、これもまた忘れがたい一冊になった。

 「ナツコ―沖縄密貿易の女王 」奥野 修司・著(文春文庫)

 太平洋戦争直後に、沖縄より発し東シナ海全域を舞台に、つかの間の極彩色の幻のように咲き誇った”密貿易の楽園”があり、その真っ只中を駆け抜け、”密貿易の女王”と讃えられた若き沖縄の女性がいた。こんな戦後の裏面史があったと初めて知り、度肝を抜かれた次第。
 最初は占領軍たるアメリカ軍の倉庫からかっぱらったタバコなどと農産物等の物々交換を島々の間でオズオズと行ない、足りない食料などの補い合いをしていたのが、おりから中国大陸で起こった国共内戦の”特需”もあり、ついには今日に換算すれば億の単位の金を動かすまでになったという。
 まるでピカレスク・ロマンを読むような痛快さ。身勝手な”戦勝国”の鼻を見事に明かした、”打ちのめされてもへこたれない雑民の心意気”に大拍手だ。ザマミロ、米帝。

 「刑務所の前1~3」花輪和一・著(小学館)

 楽しみに読んでいたんだけど、ついに完結篇がでてしまった。う~ん、もっと続けて欲しかったんだがなあ。
 改造モデルガン、および実銃の所持でパクられた体験の漫画化により、という奇妙な形でメジャー(?)な存在となってしまった花輪和一だが、これは著者が「銃砲」をいかにして不法に所持するに至ったかを、真正面から描き出した書である。
 ともかく、著者が手に入れた錆だらけの廃拳銃をシェイプアップ(?)し使用可能なものに仕上げて行く描写に釘付けになってしまう。めちゃくちゃ面白いのだ。
 錆を落とし、ハンダで欠落を埋め、部品を追加。様々な工夫を凝らし、困難を乗り越えて銃を修復する著者の高揚がグイグイと伝わってくる。モデルガン好き、ならびにプラモデル・マニアにはたまりませんぜ。

 「いつまでもデブと思うなよ 」岡田斗司夫・著(新潮新書)

 同じく、「改造ネタ」として。こちらの相手は自分の肉体。と言うか体重。著者は「1年で50キロの減量に成功!」と勝利の雄叫びを上げるのだけれど。人間存在をその内に閉じ込める奇怪でままならない相棒としての肉体、なんてイメージが浮かんでしまったのだった。
 ある意味、一番インパクトのあった一冊。しかし、こんなに上手い具合に行くのかね?
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by lunaluni | 2008-01-09 02:09