2010年度版、アップしました。(2011年1月15日)


by lunaluni

マリーナ号・選 2004年度

 「理想郷としての第三帝国・ドイツユートピア思想と大衆文化」ヨースト・ヘルマント 著(柏書房)

 第一次大戦後、混乱期のドイツにおいて、ほとんどトンデモ本状態で書き流された、大量のゲルマン民族意識発揚SF本群を探求解析しつつ、あのナチスを生んだ時代と精神風土に切り込む研究書。咲き誇る狂気の花園に、こちらの想像力もヒリヒリと炒り立てられる。

 「南のポリティカ~誇りと抵抗」上野清士・著(ラティーナ)

 ”アメリカの裏庭”と渾名される南米においてアメリカ合衆国が、ただ自国の利益のためだけに他国にどんな暴虐を働いてきたか。著者はラテン音楽の雑誌に連載されたこの政治エッセイにおいて、さまざまな例証を挙げつつ、踏みつけにされた”南”からの視点による異議申し立てを行い、ついにはアメリカ合衆国の支配システムが、全世界を覆う檻であることを明かして行く。我々がいかにアメリカ合衆国にだけ都合の良い物の見方で世界を理解するよう教え込まれてきたかを知り、目から鱗を落とそう。

 「昭和が明るかった頃」関川夏央・著(文春文庫)

 昭和三十年代、吉永小百合や石原裕次郎を擁し、走り出したばかりの高度成長期の日本を駆け抜けた映画会社”日活”の、その後の栄光と破滅を描いて、戦後日本の辿った運命を焙り出す歴史検証エッセイ。我々はいつ、どのような間違った曲がり角を曲がって、このような暗闇に着いてしまったのか。振り返れば、苦くも切ない足跡が風に吹かれている。

 「ネコカッパ」逆柱いみり・著(河出書房新社)

 いかにも”旧ガロ”出身の漫画家らしい暗く澱んだ筆で描く、気ままな幻想絵巻。温泉を巡る水上バスや都会の真ん中にそびえるヘビ女タワー。町を行き交うのは、乗り物として飼い慣らされた巨大カメムシや懐かしいオート三輪車。繰り広げられる奇怪な幻想は、子供の頃に熱に浮かされて見た悪夢の、どこか生暖かい懐かしさに通ずるものがある。
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by lunaluni | 2007-12-23 23:16