2010年度版、アップしました。(2011年1月15日)


by lunaluni

マリーナ号・選 2003年度

 「ラピスラズリ」山尾悠子

 時の向こうで伝説化していた、華麗なるイメージの神秘館。その女主人の帰還だ。ほぼ30年ぶりの連作長編。不可思議なる銅版画。冬眠者。館に巣食うゴースト。などなど。書き上げられた瞬間に百年の錆に覆われたかのような鈍い輝きを放つこの幻想物語の中で、永遠にさ迷い続けたい。

 「帝都東京・隠された地下網の秘密」秋庭俊

 国会議事堂付近の地下鉄の路線図が、出版会社によって互いに矛盾しあうことに気付いた著者の、軽い気持ちで始めた調査は、国民の目からは隠蔽され続けている、とてつもない事実に突き当たる。東京の地下には、国民の目に隠された大空間が、どうやら戦前より存在している。事実の明らかにされてゆく過程はとてつもなくスリリングであり、しかもなお秘密は秘密であり続ける現実に、慄然とさせられる。

 「日本フリージャズ史」副島 輝人

 報われぬ芸術家のドキュメンタリーは、そのまま濃厚な青春小説として成立する。見果てぬ夢を追い、空しく砂を掴んで果てる挫折物語の、あまりにも古臭い美しさ!これは日本の前衛ジャズ創造に賭けた者たちの、報われるはずのない戦いの日々の記録。取り上げられた人々の平均寿命そのものが短い。が、儚過ぎるその死に涙するのは流行らない。奥歯で噛み締め、ページを閉じるだけで十分だ。

 「奇想天外兵器・ニューエディション」渓由葵夫

 落ち込んでしまった”戦争”の悪夢と狂騒から無理やり勝利を掴み出さんと、一発逆転を狙った人類が生み出して来た、さまざまな奇想に溢れた兵器の数々が紹介されている。巨大過ぎる戦車、飛びそうにない飛行機、その他の、壮大なる愚考の記録。本気で作るつもりでいたのか?国家事業として?こんなものを・・・
 ”コメディとは、パニックに陥った際の心のありようを、後に冷静になって語り直したもの”との定義に従えば、これは確かに、コメディの大道を行く一冊だろう。主演は全人類、エンドマークは実はまだ見えていない。
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by lunaluni | 2007-12-22 22:41