2010年度版、アップしました。(2011年1月15日)


by lunaluni

マリーナ号・選 2002年度

「幻の漂泊民・サンカ」沖浦和光

一所不在一畝不耕。定まった住処を持つ事も無く山中を漂泊した”サンカ”の人々の謎に包まれた歴史の実相を追った書である。長い年月の間に積み重ねられてきた様々な誤解や偏見を払いのけた後に浮かび上がってくるのは、追いやられた「歴史の裏通り」を、寄る辺ない命の灯火を点しながら歩き続けたサンカの人々の魂の揺らめきだ。それを包み込むようにして、彼らの残したわずかな足跡を辿る著者の暖かな視線が胸を打つ。

「大森界隈職人往来」小関智弘

東京湾沿いの半農半漁の小村が時代の波に翻弄され、町工場が立ち並ぶ”職人”の街へと姿を変えて行く様が、著者の一家の歴史や、自身の旋盤工として一代記とを、重ね合わせて描かれて行く。数奇な運命をたどった地の歴史であり、そこに生きた人の歴史である。ある時は成長期の日本の産業を底支えし、そしていつか、技術革新の波の到来で”時代遅れ”の烙印を押され、年老いて行く人と町。勝ち負けではない。誠意を持って、自らを翻弄し続けた時代の巨大なうねりと切り結んだ人の営為が美しいのだ。

「心のスケッチブック」飯田佳織

今をときめくモーニング娘。の第2期リーダーが、得意の絵画と詩によって描く、夢、憧れ、そして仲間たちとの友情。などといえば、何か可憐な詩画集ででもあるかのようだが、そして、確かにそのような主旨で作られた書ではあるのだが・・・結果はとんでもないものになっている。いや、これは病んでいます。不安に満ちたイメージの連発だ。華やかなスポットライトの下で実は増殖していた心の暗黒は、奇妙な迫力を持って、ページを繰る者の心に揺さぶりをかける。

「小さな人々の大きな音楽」ウィルス&マルム

チリ、フィンランド、ジャマイカ、チュニジア、スリランカ、トリニダード、ウェールズといった「小国」における大衆音楽のあり方と、それがいかに大規模な多国籍音楽企業の活動によって翻弄され、変形されつつあるのか。詳細なフィールド・ワークによって、その様相を追った書。ここにおいては「経済効率」とは即ち、「大国のメジャーな音楽」が全世界的規模で一律に大量生産、販売される事であり、また「小国のマイナーな音楽」の圧殺を意味する。文化のフィールドにおける世界的規模のエントロピー増大についての、重い警告の書である。
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by lunaluni | 2007-12-21 22:45