2010年度版、アップしました。(2011年1月15日)


by lunaluni

阪本直子・選 2002年度

「風雲児たち」みなもと太郎

幕末編のスタートと、新版刊行を祝して。明治維新のヒーロー達の話をするのに、まず関ヶ原から始まって、会津藩の誕生や水戸学の始まりも詳しく語って、更にまだ幕末とはいえない時期の蘭学者達なども洩らさずに……という長々しいやり方が出来るのはマンガならでは。私が未だに吉川英治の『宮本武蔵』もマンガ『バガボンド』も読む気が起きないのは、司馬遼太郎「真説宮本武蔵」と、そしてこのマンガの影響だったりします。

「グーグーだって猫である 2巻」大島弓子

1巻終了時には2匹だった猫が、気がついたら4匹に増えている! ほっといたらこりゃ近い将来確実に“猫ばあさん”化するんじゃなかろうか……と思いつつも、初代猫サバ1匹時代とは明らかに違う描きっぷりに「おっ」と目を見張らせられもします。それは「飼い主バカな大島弓子に突っ込みを入れるアシスタント嬢」の登場。また、闘病エッセイマンガとしても面白い、と言ったらモノが癌なんで語弊がありますが、しかし面白いんですよ。

「覘き小平次」京極夏彦

 直木賞候補作品に入ってて、あっそうか京極さんって直木賞は貰ってなかったんだ、と少々びっくり。結果がどうなるか判りませんが、もしも受賞したところで、京極夏彦ほどの作家が今頃直木賞っていうのもなあ。くれるってんならむしろ、もっと前によこさんかい! という怒りを込めて。更にまた、この作品どうもいまいち注目度が低いような、という不審の念をあらわにしつつ。

「胡蝶の夢」司馬遼太郎

再読本。しかし読んでみたら殆ど内容を覚えていなかったことが判明し、「おお、こんな小説は初めて読んだ!」とさえ思ってしまったのでした。一体何が「初めて」なのかというと、江戸徳川期の身分制度問題。オランダ医学を学ぶ青年達を主人公にしたこの小説では、彼等が突き当たる身分の壁が非常に重要な要素です。特に、浅草弾左衛門について詳しく述べているのが凄い。新聞連載小説だったってことを考えると尚更凄い。江戸時代ってむしろ今よりユートピアだったかもー、なバカ小説が巷には蔓延してますが、冗談言っちゃいけない。がんじがらめの煩瑣な身分、隠微で陰湿な“世間”。それが現実の江戸期日本だ。

「誘拐作戦」都築道夫

全部を読みもしないで断言してしまいますが、何やら昨今の国産ミステリは、題材「のみ」、という印象です。やれ大量殺人だとか、やれ日本が有事だとかね。鬼面人を驚かすネタさえあれば、文章が多少雑だろうが人物造形がいまいちだろうが会話が稚拙だろうが、大きな顔をしていられるという寸法。しかし初版41年前(!)のこれは違いますよ。実に20何年ぶりの再文庫化ですが、何で今までほっとかれてたの? いくら都筑道夫の作品数が多過ぎるからって。とにかく上手い。巧い! ド派手なイリュージョンも悪くはないけど、やっぱりカード捌きも鮮やかな名人のクロースアップマジックが一番ですよ。
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by lunaluni | 2007-12-21 22:43