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2010年度版、アップしました。(2011年1月15日)


by lunaluni

きじま・選 2002年度

「ふらふらふらり 第二部」藤本和也

 自費出版漫画本の体裁で出ているマンガ作品。タイトルは、ガッコを卒業したのに学生のときとさほど変わらぬ生活を送っている主人公たちの様子を指しているのだけど、あの頃は良かった(懐旧)でも、なんだったんだ(後悔)でもあるある(大事典)でもない、淡淡とした他愛なさの確認が主です。変なリキミを感じさせないのは絵の力です。
 「藤本和也作品集1995-2001」で読める短編だと、そうしたヒトコマにニコニコしたりやるせなくなったりしますが、『ふらふらふらり」は長編なので、そこに時間という無言の力が加わっています。続きを読みたいような、心配なような。


「ブリコラージュとしての介護」三好春樹

 取扱説明書ライターとしての仕事で介護関連機器を扱うことになり、下調べのために読んだ一冊だけど、そこから少し離れても面白かった。ブリコラージュなんて、レヴィ・ストロースからきた語を冠しているので身構えてしまったけど、いわゆる「現場」のほうが、権威に弱く、主義主張信条強しものであることに対して異議を唱え、関係障害という視点から介護の具体的な方法論を提示しています。方法論を提示すると、それがまた権威や主義主張になってしまうという笑えない状況に対する批判は痛快。本の目的から外れた読み方をしているような気がしますが。

「ソガイカン」ライオン・メリィ

 無国籍流浪楽団メトロファルスのキーボード奏者で、ヴァージンVSやエコー・ユ・ナイト、ヤプーズ、古くは多羅尾伴内楽団といったモダンなエキゾティシズムを感じさせるバンドで活動してきた人の自主制作によるエッセイ集。それらのバンドのファンクラブ会報などで読んだことのあるものが収録されていますが、それらの、誤変換的駄洒落が頻出する文体で、主張然とした主張や告白然とした告白になることを避けた無頼な文章のファンでした。
 無意識、慣習、成り行きで平然と放出されている禍禍しい「意味」にものすごく敏感なひとなのだと思う。敏感だけど、納得しない。で、いじける。分析しないで、駄洒落を連発する。でも、納得していないということが強く伝わるので、ごまかしや作為が感じられない。無頼だ、と思う所以です。ファンでなくても楽しめると思うのですが、そこらへんはファンなもので、割り引いてください。バッキングを担当している元ちとせさんの愛読書、だそうです。

「安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 」山岸俊男

 まったく予備知識なしで書名だけで手に取った一冊。手に取った背景には、このところのキナくさい情勢やうさんくさい思想の横行、動機と行動のバランスを欠いた殺人事件の頻発などがありました。
 統計分析を主とした社会行動論です。社会的不確実性が存在すると、生きにくい、ではどうしたら無くせるのか、何故無くすことができないかを、人間の心理に還元しないで、追求しようとしています。どういう人かは知らないのですが、「偏差値の低いひとは人を疑いやすい」といった記述には表面をとらえて気色ばむ人もいるだろうに、しらっと悪意なく書いてしまえるところに、学者としての矜持を感じています。
by lunaluni | 2007-12-21 22:40