2010年度版、アップしました。(2011年1月15日)


by lunaluni

阪本直子・選 2001年度

「 盤上の敵 」北村薫

「ノベルス版のための前書き」に、「今、物語によって慰めを得たり、安らかな心を得たいという方には、このお話は不向きです」とあります。それで「ははあ」と思 いましたね。〈円紫さんと私〉シリーズで、心温まるミステリの書き手としての評判 が確立してる北村氏ですが、短編集『水に眠る』などを読めば、どうして、いくらで も怖い世界を追求できる作家なのは明らかだったし。「本格原理主義者」としての顔を、ついに非情なまでにあらわしたのか……と思ったのですが。  
やっぱり、北村氏は北村氏でした。
確かに非情。でも、冷血じゃない。

紙の上に文字で書かれたフィクションの世界であれ、人が死ぬのは重大なこと。
これが北村作品の世界です。ここらへんが、その他の今もてはやされてる日本ミステリ 界の有象無象(と、敢えて言うぞ)とは決定的に違うところ。
「苛酷な運命や状況」を緻密に書き込んだ結果、読者の何人かにつらい思いをさせたと知って、わざわざ前書きをつけた北村氏。いい人です。積極的に、いい人だ。
作者がそういう人だから、この小説にも「イヤなところ」は一つもない。
北村氏本人 は、駒と駒が戦う図式を描いた小説だ、と認識してるらしいんですけれどね。「駒」 である登場人物なんか、ただの一人もいませんよ。  
本格ミステリを読む知的興奮と、優れた小説を読む感動とを、一度に満喫できる傑作です。

「 続巷説百物語 」京極夏彦

パターンをよしとしない京極夏彦。続、というより裏ですね。前作『巷説百物語』 の各編と、交互に配置される形の時間軸。又市一味自身の身の上に関わる事件の 数々。やろうと思えばこのシリーズ、必殺仕事人みたいな形で延々といくらでも続け られた筈。でも作者の資質がそれを許さないのだな。(内田康夫、見習え!)  WOWOWでドラマ化された話がいくつも出てくるけど、脚本が先にあって小説に組み立て直したのか、小説の案が先にあったのを判り易く脚本にしたのか、どっちな んでしょう。「七人みさき」など、やはり今回の小説のほうが面白いです。  
注目はカバーの裏。今回もまた血生臭いぞお。

「 加田怜太郎全集 」

昔から名のみ知っていた福永武彦のミステリ作品。「ちくま日本文学全集」で片鱗 に触れて以来何年経ったか、ついに全貌をつかむことができました。いやあ、生きてるといいこともあるぜ。  どうも最近のミステリって、案さえよければ、文章がどんなに下手だろうが粗雑だろうが、書評子の誰一人としてそれを問題にしないんだよね。翻訳ミステリに偏重し た読書生活を送ってた身としては、大いに文句があります。翻訳家で文章の下手な 人って、殆どいませんからねえ。
たまに国産ミステリを読むと、文章がまずくてまず びっくり。
それが売れてるとわかって二度びっくり。  
というわけでこの短編集。上手い!
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by lunaluni | 2007-12-20 23:50