2010年度版、アップしました。(2011年1月15日)


by lunaluni

マリーナ号・選 2001年上半期

 ☆「ステ-ション」マイケル・フラナガン(角川書店)

 アメリカの田舎の古鉄道をめぐるノスタルジイ関係の本と扱われて、皆もそう思っているだろうが、そうじゃないんだってば。

 ここで描き出されているのは、滅亡してしまった人類の足跡をたどる旅だ。

 人類の文明は、実はとうに滅び、ここに描かれている古いロ-カル線とともに草むす野辺に、遠い昔の思い出となって眠っている。

 あなたはまだ世界が続いていると信じているだろうがね。

 この書を常に枕元に置き、眠れぬ夜はこれをひもとき、逝ってしまった全人類のために祈ろう。

 ☆「銃・病原菌・鉄」ジャレド・ダイアモンド(草思社)

 なぜ、人類の歴史は、このような方向に進行してきたのか?

 アメリカ先住民がヨ-ロッパ大陸を「発見」し、植民地化するような形で歴史が刻まれる可能性はなかったのだろうか?

 実は、当たり前のように受け止めていた人類史の裏側には、とんでもないイカサマが隠されているのではないか?そんな、私がつねずね抱いていた疑問の一つに回答を与えてくれた書。

 そうか。そうだったのか。神の気まぐれなエコヒイキに挑むミステリ-が一巻。

 ☆「バリ島」永渕康之(講談社現代新書)

 バリ島と言えばガムラン音楽にケチャ・ダンス。

 その、まるで「私は第三世界の文化にも、きちんと目配りをしておりますぞ」なんて「教養人」の皆様の好みに合わせたかのような「芸術臭い民俗芸能」の有り様に、以前から私は、うさんくささを感じていたのだが・・・

 これは、「侵略するヨ-ロッパの都合」と「侵略された側の都合」のハザマに生み出された痛ましくも罪深いでっちあげの記録だ。

 「銃・病原菌・鉄」とペアで読むのも意義あり。

 ☆「鳥類学者のファンタジア」奥泉光(集英社)

 「模倣犯」だ、いや「片思い」だ、などと重苦しい成り行きになりそうだった今年のベスト1選出シ-ン?の腰をフニャフニャに揉みほぐした脱力SFの登場だった。

 この軽さがいい。なおかつ、ちゃんとSFしているのがいい。
 「宇宙オルガン」等のアイディアで「SF的風景」を見せてくれたのがいい。
 あんまり力を入れて論じる気にもなれないところがいい。

 話の骨格としては、これ、ハインラインの「夏への扉」の変奏曲だね、きっと。
 ところで、「オルフェウスの音階」を弾いてみたけど、何も起こらなかったぞ(笑)

 ☆「影が行く」永渕康之(講談社現代新書)

 闇の彼方から聞こえてくる、妖しげなセラミン・ミュ-ジック。黴臭い禁断の書庫のホコリの中から、古き良き怪奇SFたちが帰ってきた。

 そうなのだ。SFって本来は、こんなにうさん臭くいかがわしく、それゆえにワクワクさせてくれる「異物」だったのだ。

 そいつを読みふけるのは、少年の日のちょっとやましい、そして聖なる屋根裏の秘儀だった。

 時は流れ、あるいは文学になり、あるいはお子さまの健全な読み物になり、ついにはどこかへ消えてしまった、外宇宙からの怪物たちの伝説に捧ぐ。
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by lunaluni | 2007-12-20 00:54