2010年度版、アップしました。(2011年1月15日)


by lunaluni

キリコ・選 2001年上半期

 ☆「陰陽五行と日本の民俗」吉野裕子(人文書院)

古代に中国から移入されて深いレベルで同化し、現代にいたるまで日本文化の深層で脈々と続いている陰陽五行思想。現代の私たちはもはやそれがどんなものだったのか知ることなく日常を過ごしていますが、我々が当然のこととして受け入れ続けている年中行事や風俗文化がいかに陰陽五行の世界観によって「合理的に」裏打ちされいるかを解き明かした本です。
正月の門松の意味は?なぜ節分に豆をまくのか?土用丑の日にウナギを食べるのはなぜか?冬至にカボチャを食べ柚子湯に入るのはなぜなのか?なぜ地震を起こすのがナマズなのか?なぜ桃太郎のお供は猿・犬・雉なのか、キビダンゴが意味するものはなんなのか?カッパがああいう姿をしていると想像された理由は?・・・などなどの、普通は疑問にも思わず、また思ったとしても答えの出ない謎が、陰陽五行理論を切り口とすることによって鮮やかに解明されてしまうのです。これは快感。

やや強引なところもありますが、西洋の現実的合理思想とは異質の「呪的合理思想」の深さの一端に触れることが出来る本であります。

 ☆「アイリッシュ・ハートビート/ザ・チーフタンズの軌跡」ジョン・グラット(音楽の友社)

現在のアイリッシュ・ミュージック全盛の土台を築き上げたザ・チーフタンズ。

この本は、リーダーのパディ・モロニーを中心に彼らの足跡を丹念に追ったバイオグラフィーです。

膨大な資料とインタビューとから彼らの素顔に迫ったこの本を読むと、彼らがいかにアイルランドの伝統音楽を愛し、いかに自分達の信じる道を貫き続けたかがよくわかります。

パディ・モロニーの豊穣な才能と圧倒的な情熱の強さは、感動的ですらあります。

チーフタンズ・ファンのみならずアイリッシュ・ミュージックがお好きな方にもお勧めの良質な本です。

 ☆「ガリヴァー旅行記」スウィフト(岩波文庫)

何で今さら?とも思いますが、実は今年になって初めて読んだもんで。。。

ガリヴァーといったら子供の頃に読んだ「小人国」「巨人国」の童話化されたものしか知らなかったのですが、友人に勧められて完全版を読み、あまりの凄まじさに打ちのめされてしまいました。まさかこんな話だったとは・・・。最初の「リリパット国渡航記」からこれでもかというほどの皮肉と嘲笑。話が進むにつれどんどん作者の厭世的人生観が剥き出しになっていき、「フウイヌム国渡航記」ではついに人間そのものに対する呪詛にまで行き着いてしまいます。そして最終章、絶望と厭世と人間不信に満ちた「書簡」・・・もう、ガリヴァー(=作者)に対するあまりの哀れさに涙が出てしまいました。。。

なぜ当時出版禁止にならなかったのか疑問に思うほど、暗黒のオーラに満ち満ちた危険な小説。ヤバすぎます。これが夢のある童話として知らない人もいないほどに愛されているという事実が、なにか悪い冗談のようにすら思えてきました。 今年、最も衝撃を受けた一冊です。
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by lunaluni | 2007-12-20 00:50