2010年度版、アップしました。(2011年1月15日)


by lunaluni

マリーナ号選 2010年度

☆創られた「日本の心」神話
 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史 輪島祐介・著(光文社新書)

 まだ形成されたばかりと言っていい「演歌」なる大衆音楽のジャンルを、まるで大昔から我が国に存在した音楽であるかのように吹聴する。そして「日本人の心である」などと言いくるめる。そんな無茶な歴史捏造はなんのために発生し、どのように人々に受け入れられて行ったのか。日本の大衆音楽史の大いなる闇にメスを入れる書。
 さらに、五木寛之の小説に登場する昔気質のプロデューサー、”演歌の竜”と、そのモデルになった人物とのキャラの落差が何を意味するか?など。
 あの頃、なんでもなく聞き流していた”流行歌”の影で何ごとが起こっていたのかが執拗とも言いたい追求の内に姿を現す。凄い凄い。

☆黒檀
 カプシチンスキ・著 工藤幸男・阿部優子・武井摩利・訳(河出書房新社)

 ポーランドの国際派ジャーナリストによるアフリカ取材の集大成。あの大虐殺の、あの独裁者の背後で蠢いていた現実が、リアルな手触りで明かされて行く。
 この書のうちに、こちらの「なんでアフリカは、ああなっているのか」の疑問のことごとくの解説が用意されてある。読むうち、アフリカの体温が伝わってくるような。

☆アメリカは歌う
 歌に秘められた、アメリカの謎 東理夫・著(作品社)

 アメリカの大衆歌の中に歌いこまれたアメリカ史の裏面を読み解く。
 ファンタジックな、昔話と民謡の里とイメージしていたアパラチア山系が、移民以前、ヨーロッパにいた頃から背負い込んだ桎梏を引きずる、業の深い人々の因果の森だったとは。他、黒人霊歌に隠された秘密のメッセージやらカントリー・ソングのうちに見るアメリカ女性史などなど。実に生々しく裸足のアメリカが迫ってくる。

☆奄美民謡島唄集
 片倉輝男・著(南方新社)

 歌詞翻訳、五線譜、三味線譜などなど駆使し、多角的に奄美の島唄を紹介した書。このまま島唄弾き語りのテキストとして使うもよし、島唄の非常にリアルな解説書として楽しむもよし。当方としてはともかく、奄美のメロディを五線譜に記してくれたのがありがたかった。これは便利だ。
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by lunaluni | 2011-01-12 01:15